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金ヶ嶽の植物(番外編)

5月7日、専門学校の校外実習の引率で、3日間、埼玉県の長瀞方面へ出張してきました。

研修施設の近くには標高373mの金ヶ嶽という低山があり、その周辺を実習のフィールドに

設定しました。40分もあれば山頂の春日神社に辿り着ける山ですが、沢沿いの登山道は

険しく、何往復もしてくたくたになりました。1年生は植物の形態観察とスケッチ、2年生は

金ヶ嶽の植物相調査と鳥類相調査を実施し、それぞれ指導を行いました。朝は6時に起きて

鳥の調査、日中は登山や調査、夜は遅くまで調査のまとめやナイトハイクを実施したりと、

短い期間ながら内容の濃い実習になりました。公園とは直接関係ない話題で恐縮ですが、

番外編として観察できた動植物を3回に分けて紹介したいと思います。まずは植物編から。

秩父鉄道の野上駅を降りて、まず目に留まったのはオランダフウロでした。八王子でも時々

見る外来種です。この辺りではもっとも多い雑草のようで、あちこちに群生していました。

美しい花と、花後にできる細長い角状の果実とのギャップには、いつ見ても驚かされます。

ちょっと風変わりなタンポポを見つけました。葉に切れ込みがなくて白い毛に覆われている

のが特徴的です。調べてみると「ハイコウリンタンポポ」という外来植物と判明しました。

初めて見たような気がしますが、グラウンドカバーとして用いられることもあるそうなので

見逃しているかもしれません。秩父の山里まで来て、思いのほか外来種が多いのには少し

拍子抜けしました。そんな中、ミコシガヤなどの希少性の高い在来植物が無造作に生えて

いたりして、油断はできません。新旧入り交じっているのは秩父の山里もニュータウンの

里山も同じなんですね。もちろん顔ぶれは違っているので、その比較もまた面白いところ。

まずは、研修施設の敷地内で学生たちとウォーミングアップ。整備の行き届いた雑木林では

ギンランが出迎えてくれました。多摩地域よりも2週間ほど開花が遅いようでしょうか。

林縁にはマルバヌスビトハギの群生、芝生には在来種のミミナグサも顔を出していました。

金ヶ嶽の登山口付近からは、本格的に植物相の調査を行いました。埼玉県では非常に貴重と

思われるオオチゴユリが実を付けていました。また、秩父多摩甲斐国立公園の指定植物でも

あるミヤマカラマツやウスバサイシンも流れのそばで見つかり、いざ山に足を踏み入れた

途端にその豊かさが伝わってきました。本格的な調査がほとんど行われていない山のよう

なので、学生の調査と並行して、重要な種類については私もなるべく記録をとることに・・

出会った植物の一部を写真にて。ヤマブキソウ、コガネネコノメソウ、ツルカノコソウ、

イワタバコ、カントウマムシグサ、カテンソウ、アズマガヤ、ヤブデマリ、イヌザクラ、

ツルデンダ、フクロシダ、コセイタカシケシダ(ホソバシケシダ×セイタカシケシダ)です。

せっかく来たのだからと、最終日の朝は一人で荒川の河川敷を散策しました。岩の隙間から

生えるヒメウツギ、ユキヤナギ、ナルコスゲ、ウラハグサ、メガルカヤなどに長瀞らしさを

感じつつ、源流でも外来種のナヨクサフジが元気良く蔓延っている姿に衝撃を受けました。

さて、だらだらと確認した植物を書き連ねただけの記事になってしまいましたが、学生が

熱心に調査を行ってくれたおかげで、調査結果も興味深いデータを得ることができました。

例えば、登山道の入口付近、中腹、山頂付近の3つの区画で帰化率(外来種の割合)を比べて

みると、入口付近では30%程度、山頂付近でも多少の種類が見られたにもかかわらず、中腹

においては驚異の0%という結果に。中腹も外来種の侵入機会は当然あるはずなのですが、

在来植物がバランス良くニッチを埋め尽くしており、外来種の入り込む余地がない、または

外来種が入り込んでも在来植物の勢いに負けて定着するに至らないなど、思い付くだけでも

様々な要因が考えられると思います。いずれにせよ、林床植生が安定しているのでしょう。

できることなら、今後も継続して金ヶ嶽の植物相をモニタリングしていきたいところです。

おまけ。山間部に広がるのどかな農村風景に心が洗われました。“日本の誇り”ですよね!


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