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秋川丘陵の自然さんぽ

10月15日、講師の仕事で、武蔵五日市から広徳寺(あきる野市)を目指して歩いてきました。

秋川丘陵はすっかり秋の風情に溢れており、あちこちからモズの高鳴きが聴こえてきます。

涼しく快適な散策日和となりました。道中で出会った動植物のうち、一部をご紹介します。

この日、私がもっとも印象に残ったのは広徳寺の林縁に群生していたキバナアキギリです。

長池公園のカタクリ観察路をはじめ、南多摩でもあちこちに分布しているので、珍しいもの

ではありませんが、一面の群落、それも花がとても良い状態でした。キバナアキギリなど、

サルビアの仲間の花を見ると必ずやってしまう遊びがあります。細い枝を花にやってきた

昆虫に見立てて花の奥まで差し込むのです。枝の先が仮雄しべに接すると、すぐに上から

2本の雄しべがパタンと降りてきて差し込んだ枝をホールドします。つまり訪花した昆虫の

背中に、雄しべがペッタンペッタンと花粉のスタンプを押すように設計されているのです。

広徳寺周辺で観察した植物です。ナガバノヤノネグサ、ユウガギク、ヤマゼリ、カヤラン、

イワウメヅル、トキホコリ、ササクサ、コウホネ、ミヤマシキミ。広徳寺といえば、カヤと

タラヨウの大木が天然記念物に指定されているほか、2本の巨大なイチョウが有名ですが、

じっくり見ていくと足もとにも見どころがたくさんあります。境内裏手にあるため池には

コウホネが咲いていました。長池公園で栽培しているヒシは、この池から頂いたものです。

広徳寺までの道のりは、段丘崖の斜面樹林、水田、畑地と変化に富んでいて飽きることなく

楽しむことができました。順にサクラタデ、キクイモ、ヤマアイ、イラクサ、ソクズ(実)、

ススキ3種(ススキ・オオアブラススキ・アブラススキ)、サワガニ、オオアオイトトンボ、

ミナミアオカメムシです。対岸の八王子市域を含めた秋川流域一帯に広がる水田や湿地には

サクラタデが多く見られます。多摩丘陵では減少している種類の一つなので、自然な姿を

見るなら秋川丘陵の水辺がおすすめです。長池公園の第一デッキで開花中のサクラタデも、

秋川のさらに下流、滝山丘陵の北側に広がる高月町の田園地帯に由来する保護栽培品です。

サクラタデを観察した五日市の田んぼでは、渡りの途中に立ち寄っていく小鳥、ノビタキに

出会いました。今年はノビタキが多いようで、各地で観察されています。私は今年まだ見て

いなかったので、このコースならもしかしたら・・とぼんやり期待していたところ、運良く

その姿を見つけることができたのでした。野鳥を撮影される方には、ノビタキと秋の草花を

絡めた写真が人気で、コスモス畑の“コスノビ”、セイタカアワダチソウの“アワノビ”、

ソバ畑の“ソバノビ”など、組み合わせに業界用語っぽい呼び名を付けていたりします笑。

秋川丘陵の秋を満喫しつつ、思いがけず、長池公園の域外保全植物の故郷を訪ねることも

できて有意義な散策となりました。季節を変えて、何度でも歩きたくなるコースですね!


 
 
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