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ナガタマムシの楽園

6月29日、知人のお誘いで近所の畑へ遊びに行きました。段々畑の片隅には大きなエノキが

そびえ立ち、心地よい木陰を作っていました。「一里塚のエノキ」に代表されるように、

この辺りでも畑のそばなどにはエノキが植えられ、木陰を百姓仕事の休憩場所として利用

したり、芽吹きから開花結実、落葉に至るまで四季の変化を楽しみつつ作業の時期の目安と

したり、また、道祖神を祀って旅の道しるべとしたりと、様々な形で親しまれてきました。

畑のエノキには、周辺の樹林地から多くの生きものが集まってきます。ゴマダラチョウや

オオムラサキはエノキを食草とし、落ち葉の布団で越冬します。そして、果実はイカルなど

小鳥たちの大事な食糧になります。夏のエノキの主役はなんといってもタマムシでしょう。

このエノキにも美しいヤマトタマムシが何匹も集まっており、頭上を飛び回っていました。

一方、小鳥が運ぶことで意図しない場所からぐんぐん成長してしまったエノキの実生木は、

農作物の成長に影響を及ぼすこともあるので伐採されます。伐採されたエノキの切り株から

生えてきた“ひこばえ”や、その周囲に積まれた伐採材に注目してみることにしましょう。

美しいタマムシの一種、シラホシナガタマムシが集まっていました。その目的は産卵です。

大木の周りを飛び回っていたヤマトタマムシに比べるとミニチュアサイズですが、それとは

また違った美しさがあり、思わず見惚れてしまいます。長池公園でも、かつて体験ゾーンの

エノキを伐採した翌年にたくさん見られたことがありました。最近は見なくなりましたね。

シラホシナガタマムシのマリンブルーに釘付けになっていると、それよりもずっと小型の

ナガタマムシ類が目に止まりました。色彩は暖色系でラズベリーカラーに近いでしょうか。

以前からじっくり見てみたいと思っていたベニナガタマムシでした。息を呑む美しさです!

交尾するベニナガタマムシに、やや大きめのナガタマムシ類が近付いてきました。これは

ケヤキナガタマムシにそっくりですが、翅の先端の形やエノキの材木にやってきていること

からムネアカナガタマムシと思われます。通り過ぎるかと思いきや、なんと交尾している

ベニナガタマムシのペアの背中に自ら乗っかっていきました。こんなことがあるなんて!

切り株から出た“ひこばえ”には、おなじみのヒシモンナガタマムシが集まっていました。

菱形模様が渋すぎます。この仲間ではもっともよく見かけますが、小さいので見逃し注意!

・・ということで、エノキで見られる「ナガタマムシ四天王」が大集結していたのでした。

たった1本の、それもお邪魔虫として伐られてしまったエノキが、これだけ多様な甲虫に

繁殖の場を提供しているとは・・里山の生態系パズルがあるとすれば、また一つ、その

1ピースを見つけた気分です。里山の文化と生物多様性は、深く結び付いているのですね。

今日はすっかり脇役扱いしてしまったヤマトタマムシにも、ちゃんと登場してもらいます。

畑の片隅にまとまって植えられていたタラノキには、センノ(センノキ)カミキリが大量!

畑にあるタラノキは刺の少ないメダラであることが多いので、捕まえる時も安心なのです。

タラノキやハリギリを覗いて歩くと、今年は必ずといっていいほど彼らが見つかりますよ。

さて、“夢虫”になってばかりではありません。ジャガイモ掘りなど、子どもたちと一緒に

畑仕事を存分に満喫したのでした。たまには畑でゆったり過ごす休日も良いものですね。


 
 
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