見えているようで見えていない
10月3日、ソニーグループ(株)と(公財)日本自然保護協会によるフォトコンテストの受賞作品展示会開催に合わせ、
フォト講座が催され、講師を担当しました。下見の際の様子は、こちらの記事をご覧下さい。身近な自然で「わぉ!」
迎えた本番、参加者の皆さんも意欲満々で思わず「わぉっ!」と驚くような素敵な写真を何枚も撮られていました。
今年は大人の参加者が多い中、若者の活躍が光りました。中でも、博学な中学生受講者が見つけたこちらのシーン。
屋外での撮影会も終盤という頃、自然館前のスタート地点へ戻ってきた一行ですが、私も含め、その場のほぼ全員が
最後の粘り(?)で目線の高さや足もとに注意を払っていました。「あそこに生きものがいます!」と頭上を指差す彼に
全員が注目すると、目線の先に、照明設備へ入り込んだニホンヤモリのシルエットがこちらを見下ろしていました!
毎日この下を通っているスタッフすらもこれには気が付きませんでした。見えているようで見えていないものです。
目線を低くして、近い距離をじっくりとサーチしていく手法は自然観察の基本ですが、時々、頭上を仰ぎ見ることで
思わぬ発見をすることがあります。空を飛ぶ鳥や虫はもちろんのこと、こんな風に青葉に溶け込んでいるムクノキの
まだ青い実に気が付いたり、ジョロウグモの網に引っかかってまるで空中に文字を書いたようなアカマツの落ち葉と
目が合ったり。ミクロからマクロまで、下から上まで。自然観察の視野は広ければ広いほど、出会いも広がります。
食草であるクズの葉の上で日光浴するウラギンシジミ、地上に落ちたアカメガシワの実に吸汁のために集まっている
オオホシカメムシ、ニシキギに数えきれないくらい大発生しているキバラヘリカメムシとその卵など、植物と密接な
関係を持つ昆虫たちを観察することができました。こうした出会いは、やはり植物ありきですから植物もセットで、
フレームに収めたいところです。もちろんこれは生態撮影の一つのアプローチにすぎませんので、あくまで参考に。
キバラヘリカメムシは成虫も見られたので、参加者の皆さんには特徴的な青リンゴの匂いを確かめてもらいました。
想像以上に良い匂いが漂ってきて、大盛り上がり!残念ながらカメラでは匂いを記録することはできません。しかし
その時の写真を撮っておくことで、後から写真を見返した時に、あの匂いが蘇ってきて、皆さんのリアクションまで
鮮明に思い出すことができるはずです。たとえ写真では表現しきれなかったとしても記録自体に意味があるのです。
最後の写真は、この季節を象徴するワンシーン。桑の幹に残る、ボーベリア菌に侵されたミンミンゼミの亡骸です。
例年、数々の名作を生んできたフォト講座。今年も愉快な作品がたくさん出揃い楽しく講評させていただきました。
カメラの知識に疎い私ですが、自然観察の記録としての撮影はずっと続けていこうと、決意を新たにしたのでした。



