イチモンジハムシとケイワタバコ
- ひとまちみどり由木 指定管理者
- 3 日前
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更新日:2 日前
6月18日、猛暑が続き、いつもなら瑞々しい里山の草花もくたびれているように見えます。
外での作業が多い私たちも、熱中症にはくれぐれも注意したいところです。果たしてこの
暑さは梅雨の中休みなのか、それとも暑いまま夏に突入するのか、どうなるのでしょう。
さて、この日は講師の仕事で北鎌倉の観光地を歩いてきました。平日だというのにどこも
物凄い人出で、暑さと人の多さに酔いそうでした。大多数の観光客にとって、お目当ては
アジサイなわけですが、「この花に水を垂らしてみたら良い感じじゃない?」なんて会話が
聞こえてきてしまうと、アジサイそのものよりも、映えるかどうかが大事なんだろうな・・
とつい疑ってしまいます。私は観光地であろうと、植えられた花木であろうと、観察会では
あるものをあるがままに受け入れ、観察することを大切にしているので、何ともいえない
気持ちになりました。そんな中、アジサイの葉を歩いている小さな甲虫を参加者が発見。
イヌビワなどを食草とするイチモンジハムシでした。沿岸部の樹林地など、暖かい地域で
時々見かけるハムシの一種です。アジサイの花はさておき、イチモンジハムシの観察に一同
熱中していると、「何を見ているんですか?」と早速声をかけられました。「小さな昆虫を
見ています。」と答えると、「皆さん、虫を見て歩く会なのですね!」と驚きの表情を
浮かべておられました。「虫だけではなく、植物も生きものもなんでも好きなんですよ!」
そう答えつつ、色々と考えてしまいました。見映えのしないものをひたすら見つけ出して
喜ぶ私たちは、出会いや発見の一つ一つに至福を感じます。それは幸せなことなんですね。
鎌倉のもう一つの主役は、崖地に群生するケイワタバコです。北鎌倉では各所の崖地に自生
していてその規模は関東有数といっても良いほどですが、一般には案外知られていません。
三浦半島、逗子、藤沢で見られるものは、全て変種のケイワタバコであるにもかかわらず、
現地の案内札やガイドブックなどに「イワタバコ」と誤表記されているため、高尾山などで
見られるイワタバコと同じものであるとの誤解も生じています。基準変種のイワタバコとは
花の咲く時期(ケイワは6月)、葉の形(ケイワは左右非対称)、花序や花茎、葉裏の毛の有無
など様々な形質から区別することができます。どうか正しい名称が浸透しますように・・!
ケイワタバコが群生する崖地には、暖地性のシダ植物も豊富に生育します。コモチシダを
はじめ、写真のナチシケシダ、ミツデウラボシ、ホラシノブなどが点々と見られました。
林縁ではケムラサキニガナが花盛り。写真はナンバンカラムシ、ナツロウバイ(植栽)です。
スギの樹皮がベリベリに剥がされていたり、ツバキの幹に爪痕が残されていたりしました。
どうやら、頭上で騒がしく鳴いているタイワンリス(クリハラリス)たちの仕業のようです。
こうした外来種の存在感は、観光地ならではといえるでしょう。面白い観察ができました。
・・暑さと人混みにくたびれ、オオルリのさえずりに見送られて早めの解散となりました。