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イチモンジハムシとケイワタバコ

更新日:2 日前

6月18日、猛暑が続き、いつもなら瑞々しい里山の草花もくたびれているように見えます。

外での作業が多い私たちも、熱中症にはくれぐれも注意したいところです。果たしてこの

暑さは梅雨の中休みなのか、それとも暑いまま夏に突入するのか、どうなるのでしょう。

さて、この日は講師の仕事で北鎌倉の観光地を歩いてきました。平日だというのにどこも

物凄い人出で、暑さと人の多さに酔いそうでした。大多数の観光客にとって、お目当ては

アジサイなわけですが、「この花に水を垂らしてみたら良い感じじゃない?」なんて会話が

聞こえてきてしまうと、アジサイそのものよりも、映えるかどうかが大事なんだろうな・・

とつい疑ってしまいます。私は観光地であろうと、植えられた花木であろうと、観察会では

あるものをあるがままに受け入れ、観察することを大切にしているので、何ともいえない

気持ちになりました。そんな中、アジサイの葉を歩いている小さな甲虫を参加者が発見。

イヌビワなどを食草とするイチモンジハムシでした。沿岸部の樹林地など、暖かい地域で

時々見かけるハムシの一種です。アジサイの花はさておき、イチモンジハムシの観察に一同

熱中していると、「何を見ているんですか?」と早速声をかけられました。「小さな昆虫を

見ています。」と答えると、「皆さん、虫を見て歩く会なのですね!」と驚きの表情を

浮かべておられました。「虫だけではなく、植物も生きものもなんでも好きなんですよ!」

そう答えつつ、色々と考えてしまいました。見映えのしないものをひたすら見つけ出して

喜ぶ私たちは、出会いや発見の一つ一つに至福を感じます。それは幸せなことなんですね。

鎌倉のもう一つの主役は、崖地に群生するケイワタバコです。北鎌倉では各所の崖地に自生

していてその規模は関東有数といっても良いほどですが、一般には案外知られていません。

三浦半島、逗子、藤沢で見られるものは、全て変種のケイワタバコであるにもかかわらず、

現地の案内札やガイドブックなどに「イワタバコ」と誤表記されているため、高尾山などで

見られるイワタバコと同じものであるとの誤解も生じています。基準変種のイワタバコとは

花の咲く時期(ケイワは6月)、葉の形(ケイワは左右非対称)、花序や花茎、葉裏の毛の有無

など様々な形質から区別することができます。どうか正しい名称が浸透しますように・・!

ケイワタバコが群生する崖地には、暖地性のシダ植物も豊富に生育します。コモチシダを

はじめ、写真のナチシケシダ、ミツデウラボシ、ホラシノブなどが点々と見られました。

林縁ではケムラサキニガナが花盛り。写真はナンバンカラムシ、ナツロウバイ(植栽)です。

スギの樹皮がベリベリに剥がされていたり、ツバキの幹に爪痕が残されていたりしました。

どうやら、頭上で騒がしく鳴いているタイワンリス(クリハラリス)たちの仕業のようです。

こうした外来種の存在感は、観光地ならではといえるでしょう。面白い観察ができました。

・・暑さと人混みにくたびれ、オオルリのさえずりに見送られて早めの解散となりました。


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