ど根性ヒメハギ
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8月24日、許可を得て、越野にある帝京大学中・高校の敷地内の自然環境調査を行いました。これまで、由木地区の
フロラ(植物相)についてはかなり網羅的に調査してきましたが、教育機関のキャンパスやゴルフ場、企業用地などは
縁や機会が無いと敷地内に入って現地を調べることが難しく、この緑地もかねてから気になっていた所の一つです。
昨年の冬に初めて入った際には、キャンパス移設前のアセスの調査で記録されていたホンドギツネの巣穴の現存や、
ノウサギが多数生息する痕跡が見つかるなど、植物以外にも大きな収穫があり、今回も期待しつつ藪を漕ぎました。
調査の直前に集合時間が急遽変更となったため、30分ほど空き時間ができました。そこで、お隣の越野日枝神社まで
お参りしてきました。別所にも同名の日枝神社がありますが、こちらはスダジイの巨木で有名な全く別の神社です。
参道の石段を下る途中、足もとの石の隙間からヒメハギが顔を出しているのに気が付きました。ヒメハギは春頃から
咲き始めるので、今はすでに結実しています。団扇のような不思議な形をした果実は花と違ってかなり控えめです。
「いったいこんな実がどうやって運ばれるのだろう?」、「どうしてこんな場所に生えているのだろう?」・・二つの
疑問は、調べてみるとあっけなく解決しました。この果実の中に、エライオソームという甘い物質の付着した種子が
入っており、それを例のごとくアリが自分の巣へせっせと運んでいくというのです。種子の運び屋がアリということ
なら、足もとの石の隙間から生えている状況も納得できますね。果実自体もそれほど目立つ必要がないのでしょう。
切り通し状の土手には暖地性のサイゴクベニシダが複数個体生えていたり、ツルボが道ばたに彩りを添えていたりと
嬉しい出会いも多く、良いお参りができました。この一帯は永林寺、玉泉寺、越野日枝神社、御嶽神社など、社寺が
集中しており、どのスポットも違った魅力がありおすすめです。歩いて廻れる距離なのでぜひ散策してみて下さい!
さて、キャンパス内の調査も順調に進みました。雨が続いたせいかサトタマゴタケがあちこちに発生していました。
従来、タマゴタケと呼ばれてきたキノコは、2023年頃に平地から丘陵地にかけて生えるサトタマゴタケと山地性の
タマゴタケに分けられており、多摩丘陵近辺で見られるものは、全てサトタマゴタケという名前に改められました。
生育環境(垂直分布)以外の、見た目での区別はできないこともないようですが、私のような素人目には難しくてよく
わかりません。ひとまず、近隣の雑木林で写真のキノコを見つけた場合、サトタマゴタケと呼ぶようにしましょう。
冬期の調査に続き、今回も環境を指標する生きものがいくつか確認できました。薄暗い林床では、2種類の赤トンボが
観察されました。胸の模様がすっきりしているマユタテアカネと、胸に黒筋が入るコノシメトンボです。原っぱでは
ショウリョウバッタモドキやスケバハゴロモの姿も見かけました。移設前と今とでは、マツ枯れやナラ枯れ、木々の
老齢化、外来種の蔓延、竹林の拡大など、様々な出来事を経て、大きく変化を見せていますが、単純に自然の状態が
悪化しただけではなく、緑地が成熟することでかえって生きものの多様性が向上している面もあると感じています。
大切なのは、過去どうだったか、今はどうなっているのか、さらに今後どうなると予想されるのか、長い目で自然の
変遷をしっかり捉えていくことです。誰かが記録をしなければ、せっかくのオアシスも誰も知らないままにいつしか
失われてしまうかもしれません。かつて生息していたというハルゼミの合唱を想像しながら調査を終えたのでした。



