9月20日、講師の仕事で多摩川河口(川崎市側右岸)を散策してきました。
多摩川の支流、大栗川の源流域を活動拠点にする私たちにとって、湧水の行き着く先、
東京湾への出口となる多摩川河口は遠い存在であり、ほとんど馴染みがありません。
学生の頃は干潟の野鳥を観察するために何度も通った場所ですが、すっかり足が
遠のいていました。小島新田駅前は、かつての記憶と比べてずいぶん栄えており、
乗降客の多さに驚きつつ、見覚えのある住宅地を抜けて河川堤防へ向かいます。
堤防に着くと、周囲の景色が激変していて驚きました。野鳥観察に通った当時は
いすゞ自動車の工場くらいしか無かったはずですが、現在は国際戦略拠点「キング
スカイフロント」なるエリアが広がっており、羽田空港への導線として「多摩川
スカイブリッジ」が誕生していました。月日の流れを感じずにはいられません。
残念ながら、到着時は満潮に近く、干潟はごく小規模しか出現しなかったのですが、
代わりにヨシ原周辺や堤防草地で沿岸部ならではの植物をじっくりと堪能しました。
満潮時に抽水状態となる干潟で目に付いたのは、カヤツリグサ科のイセウキヤガラです。
生育条件を満たす環境の減少により、神奈川県では絶滅危惧ⅠB類に指定されています。
ヨシ原ではアイアシのほか、外来種のコゴメイやホコガタアカザなどが見られました。
堤防草地は外来種のオンパレード。ハナハマセンブリ、イガオナモミ、ヒメクマツヅラ、
ユメノシマガヤツリ、ホウキギクなどがありました。特にホウキギクは内陸ではあまり
見慣れない雑草です。多摩川でも、中~上流域で見られるのはヒロハホウキギクばかりで、
ホウキギクとの出会いは新鮮でした。6枚目は左がホウキギク、右がヒロハホウキギク。
枝の伸びる角度、葉幅、頭花の大きさなどに注目すると、その違いは歴然です。
干潟には、アシハラガニ(1~3枚目)、カクベンケイガニ(4枚目)、クロベンケイガニ、
コメツキガニなどが多数歩き回っていたほか、野鳥もちらほらと姿を見かけました。
次回は干潮時に訪れて、干潟のシギ・チドリ類や小動物を観察してみたいと思います。
照り付ける日差しの下、ずいぶんと長い距離を歩きました。皆さん、お疲れさまでした。
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