1月31日、年が明けてからあっという間にひと月が経ちました。シジュウカラの囀りが
聴こえてきて、このまま春を迎えそうな感じすらしますが、寒さの本番はこれからです。
この日は施設点検などで各地の公園緑地を廻っていました。林縁の足元につるを伸ばして
いたこちらの植物、皆さんはご存じでしょうか。テイカカズラの赤ちゃん?本当ですか?
じつはこの植物、観察会や植物調査などでたびたびテイカカズラと間違えられている植物。
ニシキギ科のツルマサキという種類です。大きくなって花や実を付ければ一目瞭然ですが、
まだ地上や樹幹を這いまわっている幼木の頃は、テイカカズラとそっくりなのです。
テイカカズラの別名である「マサキカズラ」は、このことを言っているのでしょう。
こちらが雑木林などでよく見かけるテイカカズラの幼木なのですが、違いがわかりますか?
一緒に写った写真で比べてみましょう。1枚目は左がテイカカズラで右がツルマサキ。
2枚目は上がテイカカズラで下がツルマサキ。3枚目は左がツルマサキで右がテイカカズラ。
葉っぱの付き方や形に違いはほとんど見られません。ポイントは、①葉っぱの縁の様子、
②枝の色と太さ、③新芽の様子。写真では見えませんが、葉裏の葉脈にも違いがあります。
テイカカズラは葉っぱの縁がわずかに波打つ程度でギザギザが無いのに対し、ツルマサキは
はっきりとしたギザギザがあります。テイカカズラの枝は灰色や赤褐色に色付きますが、
ツルマサキは葉っぱと同じ鮮やかな緑色です。そして、枝は太くてがっしりしています。
加えて、ツルマサキの新芽は赤っぽく、多数の芽鱗(芽を守る覆いのこと)が付いています。
色々見比べるのは面倒ですが、実際には一度見慣れてしまえば全然違って見えるものです。
ツルマサキはニシキギ科、テイカカズラはキョウチクトウ科なので、花や果実の見た目は
全く異なり葉っぱだけが似ているのです。上3枚はツルマサキ、下3枚はテイカカズラです。
花の少ない冬場の調査では、葉っぱだけで植物を見分けなければならないこともあります。
ツルマサキ以外にも、葉っぱだけを見るとテイカカズラと似ている植物はいくつかあり、
ちゃんと意識していないと見過ごしてしまったり、誤認したりするので要注意です。
写真は順にウメガサソウ、ベニシュスラン、イヌツゲです。これらの種類も、分類的には
テイカカズラとは全く無縁の植物なので、まさに“他人の空似”といえるでしょう。
ついついマニアックな記事になってしまったので、今が旬の梅の花で締めたいと思います。
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