6月30日、皆さんはヒメハルゼミというセミをご存じでしょうか?
南方系の小さなセミで、分布の北限に当たる関東地方での生息地はごく限られています。
最初に発見された千葉県茂原市、北限付近の茨城県笠間市と新潟県能生町の発生地は、
天然記念物に指定されているほど。東京都の生息状況はというと、現在確認されているのは
八王子市のみで、裏高尾の神明神社、別所の蓮生寺境内付近、南大沢の松木日向緑地が
知られています。つまり、東京では裏高尾と由木でしか出会うことができないのです。
それほど貴重な存在でありながら、まだまだ市民の認知度が低いことは残念でなりません。
シラカシなどの照葉樹の深い森に棲み、6月下旬から7月半ば頃までのごく短い期間に
声を聴くことができます。「ウィーン、ウィーン」という独特な声は、まるで壊れた
ぜんまい仕掛けの玩具のようです。先週26日から、我が家の周りでも鳴き始めました。
網戸で過ごしていると、夕方18時半くらいから鳴き始め、19時半くらいまで大合唱。
集団で一斉に鳴く習性があるため、ピーク時には会話も聞き取りにくくなるほどです。
上の写真は、昨年7月に頑張って木に登ってやっと観察に成功した時のもの。
あれだけうるさく鳴いているのに、姿を見たことがある人はほとんどいないでしょう。
というのも、葉の茂った大木のはるか上のほうの細い枝に止まって鳴くことが多く、
探しにくいからです。また、よく鳴く夕方の時間帯は、樹林内がすでに真っ暗です。
かつて、茨城の発生地では、集団で鳴く声の大きさから“オオゼミ”という1匹の巨大な
セミが鎮守の杜を守っていると信じられていたそうです。「オオゼミは神の使いで、
森に入った者は取って食われてしまう。」そんな言い伝えも残っているのだとか。
まさに、鳴いている姿を見た人が誰もいなかったからこそ、生み出された想像ですね。
姿を見ることは難しくても、梅雨明け前後の夕暮れ時限定の大合唱は本当に壮観なので、
夕涼みがてら、声だけでもぜひ聴きに出かけてみてはいかがでしょう?
どちらの動画も、先日29日の18時50分頃に蓮生寺公園(門前広場付近)で撮影したものです。
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