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ヤマコウバシ

1月29日、長池公園の梅園では紅梅が見頃を迎えています。

ところで、梅園へ上る階段の右手に写真のような木があるのはお気付きでしょうか?

そんなに大きくない木ですが、枯れた葉が枝に残ったままの姿がとても特徴的ですよね。

この木の正体は、クスノキ科のヤマコウバシという落葉樹。

関東から西の地域では、里山の雑木林などで普通に見られる樹木です。

見た目からは、あのクスノキと同じ仲間とは思えないかもしれません。

でも、果実はそっくりですし、枝葉を少しちぎってみると香りがします。

なんとなく「生姜」を連想させる独特な香りです。

葉が春先まで枝に残り、次に芽吹いてくる葉へとバトンタッチする点も、

クスノキと共通しています。(※クスノキは常緑樹ですが、春に一斉に葉を落とします。)

不思議なことに、ヤマコウバシは国内では雌の木しか存在しないことがわかっています。

さらには、それら全てがたった1本の雌株から生じた巨大なクローンであることも

近年明らかとなりました。雌だけでも種子を生産することができるというから驚きです。


ところで、枯れた木々の葉は、まるで力尽きて下に落ちるように見えていませんか?

しかし、実際には葉が枯れてから葉を落とすまでの過程にもエネルギーが必要となります。

ですので、勝手に落ちるのではなく、わざわざ葉を落としているのです。

これは、冬の乾燥と水分不足に対して、葉の蒸散作用によって木の負担が大きくなってしまうからだそうです。

それゆえ、雑木林で見られる木の多くは、寒くなる前に葉を落とし、芽の状態で冬を乗り越えています。

ヤマコウバシの場合はというと、葉が枯れてから落ちるまでの過程(離層形成)で一度ひと眠りをし、

春にこれを再開させるのではないかといわれています。

かつて、ヤマコウバシの祖先種が常緑樹であったことを示唆しているのかもしれません。

一本の木にも、まだまだ謎や不思議がたくさん潜んでいるものですね!


葉が“落ちない”ことで、受験生や就活生から一躍注目を集めたヤマコウバシ。

ご利益なんて興味が無いという方も、興味の尽きないこの木にぜひ会いに行ってみては?

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