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ノニガナのアーバニズム

5月6日、連休最終日の今日、皆さんはどんな一日を過ごされましたでしょうか。

さて、4月24日と4月30日の記事に続き、またしてもキク科の雑草、ノニガナの話題です。

多摩市立中央図書館を出て、パルテノン多摩のこどもひろばへ向かって歩いている時、

道ばたのあちこちにノニガナが生えていることに気が付きました。以前も書いたように、

南多摩では珍しい植物ですので、あまりにもたくさんあって拍子抜けしてしまいました。

曇天のため、花はしぼんでいますが、特徴的な葉や総苞片のシルエットが目を引きます。

ノニガナが生えているのは、多摩中央公園のリニューアルに伴って現在養生中の芝生や、

造成して間もない植栽地。やはり、持ち込まれた造成土などに含まれていた種子から発芽

してきたもののようです。面白いことに、先日ご紹介した八王子市内の2ヶ所の生育地と

とてもよく似た環境で、日当たり良好かつ、シバ以外の雑草がほとんど生えていない点が

共通しています。さらに、マツバウンランやハハコグサなど周囲の顔ぶれまで一緒でした。

多摩市において、古い文献にはノニガナの記録は見当たりませんが、2004年に発行された

『多摩市の植物目録(パルテノン多摩資料叢書1)』の中に、興味深い一文がありましたので

一部を引用してご紹介します。「関東地方に生育はするが分布数の少ないノニガナが、

造成地や公園植栽樹近くで見出されているが、いずれの箇所も埋蔵種子による発生と

考えるより、何らかの理由により土に混入してきた種子による発生、開花と考えられる。」

最近、私が参加しているSNSの植物コミュニティでも、同じように公園内の新しく土を

入れた芝地からノニガナが発生するようになったことが報告されていました(※他県)。

また、お隣の神奈川県では、絶滅種から準絶滅危惧種に格下げされるなど、2000年代以降に

新しい産地がいくつも見つかったことも判明しました。同じ現象が全国各地で生じている

可能性は高そうです。ノニガナの本来の生育環境は河川の氾濫原や水田畔などであり、

護岸改修や造成といった開発行為によって自生地が失われたり、耕作放棄や外来種の侵入

などによって生育に適した環境が激減したりしたことが、主な減少要因と考えられます。

かつては広範囲に分布していた植物が滅多に見られない希少種となり、それらが時を経て

都市のみどりという新しい環境下に再び現れるようになった。このような風潮は、以前に

書いたニシキソウのことを思い出させます。ニシキソウのアーバニズム (h-yugi.org)

八王子市内の芝生で見られるコアゼテンツキ、イヌハギ、クサネムといった希少植物の

数々も、同様の背景があるに違いありません。それらの植物をどう扱っていくのか、

そもそも保全の対象とするべきなのかも含めて、今後の検討課題としていきましょう。

ノニガナに執着しているわけではないのですが、私にとっては思い入れのある植物です。

ノニガナとの初めての出会いは、1993年に出版された「山野草」というハンディ図鑑。

絶版なので、知らない方のほうが多いと思いますが、何を隠そう私が初めて買った植物の

図鑑なのです。この図鑑の索引ページには、自分の見た植物にマーカーが引いてあります。

小学生の当時、植物は二の次で野鳥ばかり追いかけていたので、今思うと、どこを見て

歩いていたの?というくらいマーカーの引かれた種類は多くありません。でもなぜだか

ノニガナだけは印象に残っていて“ありそうなのにいくら探しても見つけられない”ことに

モヤモヤしたのをよく覚えています。結局、念願が叶ったのは17年も後のことでした。

思いがけず、ノスタルジーな気分に浸ってしまったので、その他の植物は写真のみにて。

順に、スカシタゴボウ、キツネアザミ、タチチチコグサ(ホソバノチチコグサモドキ)です。

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