ツマミタケをつまむ
9月16日、講師の仕事で世田谷区内の公園を巡ってきました。最初に訪れたのは23区のオアシス、等々力渓谷です。
朝から雨模様でしたが、雨ならではの愉しみはたくさんあるので、むしろ晴れていたら出会えない景色に期待を寄せ
ながら歩き始めました。渓谷に降りるとすぐに、奇妙なキノコが点々と生えているのが目に入りました。この仲間は
色々見てきましたが、パッと名前が出てこず気になるのでその場で調べてみました。正体は「ツマミタケ」でした。
2枚目の写真が生えている様子をそのまま撮ったものですが、根元から倒れてしまっているので、本来は、卵のような
部分が下にあって、それを突き破り上に向かって棒状のキノコ部分が生えています。どんな触り心地をしているのか
どうしても気になってしまい、つまんでみました。意外ともろくて、ポキッと折れてしまいましたが、肝心の触感は
断面が四角くて4つの稜がはっきりしており、「ポテロング」そのものでした!目を瞑って渡されたら、そのまま口に
してしまいそうなほど。“これは面白い発見をしたな”と喜んだのも束の間、先端のドロドロした部分、グレバから
放たれる悪臭が臭いのなんの!久しぶりに、グレバ独特の強烈な悪臭を嗅ぎました。この臭いでハエを誘っていると
いいます。手にこびりついた悪臭がたまらず、つまんだことをちょっと後悔しつつ、ニッケイの葉で消臭しました。
岩肌に張り付いた落ち葉からは、こんなメルヘンなキノコの三姉妹が生えていました。オチバタケの仲間でしょう。
湿度が高く涼しい水辺の岩肌には、アズキガイをはじめとする陸産貝類やサワガニ、そして意外なほど多くの昆虫が
生息していました。薄暗い上に植生も単調なので、陸上の生きものは正直あまり期待していなかったこともあって、
良い意味で期待を裏切られました。よく考えてみれば、どんな環境にでも生きものはいるわけで、“住めば都”なの
かもしれません。普段はほとんど気にも留めないのですが、可愛いゴマダラ模様の小さな蛾が無数に岩肌に止まって
いることに気が付きました。一度気が付くとそこらじゅうに数えきれないほど止まっているのです。この子の正体は
「クシヒゲホシオビコケガ」でした。よく似たクシナシホシオビコケガとは、胸の斑点の数などで見分けられます。
幼虫が地衣類を食べるそうなので、地衣類がたくさん生えているこの環境にたくさんいるのにも納得がいきました。
地味な種類ばかりで恐縮ですが、等々力渓谷から野毛町玉川公園、二子玉川公園と巡る中で、道中に見つけた植物の
一部をご紹介します。コモチシダ、タマシダ、マツサカシダ、ツボクサ、アリスガワゼキショウ、タカノハススキ、
カンザシイヌホオズキ、クワクサ、エノキグサです。タマシダやマツサカシダは栽培品が逸出して定着したものだと
思われますが、崖線の切通しに立派なコモチシダが自生していたのには驚きました。むかごも多数付けていました。
多摩川沿いの一面に群生するセイバンモロコシの草原では、昆虫探しの得意な受講生の方が、セセリチョウの幼虫を
次々に見つけ出してくれました。教えていただいたおかげで私もすぐに見つけられるようになり、比較観察のため、
数枚だけ巻かれている葉を開かせてもらいました。1枚目はチャバネセセリ、2・3枚目はイチモンジセセリの幼虫と
思われます。大きさは成長段階によるのであまり当てにできず、顔の模様や首元のラインの有無などに注目するのが
良さそうです。多摩丘陵にはオオチャバネセセリ、浅川にはミヤマチャバネセセリなど、環境によっては別の種類が
生息しているので、次はそれらの幼虫も探して観察してみたいと思います。得るものが多い雨の散策となりました。
おまけ。長池公園では、由木中学校の職場体験が始まりました。雨天のため、館内での作業が中心になりましたが、
創作意欲に溢れる3人が、子ども向けの新コーナー設置やクラフトづくりなどのプログラムに取り組んでくれました!



