11月2日、深夜にツグミの声を聴きました。夜は渡りの最中で、そのままさらに南下する
可能性が高く、初認というには気が早いかもしれませんが、嬉しい冬の知らせでした。
夜空を渡る小鳥が盛んに発する声のことをフライトコールといいます。
フライトコールを聴き分けるのには“耳慣れ”が必要ですが、わかるようになると、
姿が見えなくてもどんな鳥が通過しているのか推測できるので、世界が広がります。
相変わらず、マミチャジナイは2、3日に一度くらいのペースでフライトコールを聴きます。
これだけの数が通過しているのだから、昼間に観察できても良さそうなものですが、
この街に降り立つことはほとんど無く、夜のうちに駆け抜けていってしまうのでしょう。
ところで、私の住む団地内に写真の「サワシバ」という落葉広葉樹が植栽されています。
カバノキ科のシデの一種で、クマシデとよく似た姿をした木です。葉に丸みがあって
付け根側がへこんでいることや、果穂(2枚目)が細長いことなどで見分けられます。
すぐそばに植えられているクマシデの写真も貼っておきます。違いがわかりますか?
クマシデはどこでも見ることができますが、サワシバは山地の渓谷沿いなどに生える樹木
なので、丘陵地では滅多に出会えません。自宅の敷地内で観察できるのは幸運なことです。
しかしこのサワシバ、じつはかつてこの辺りに自生していた個体の子孫なのではないかと
推測しています。というのも、井草屋敷の森(現在の松木日向緑地付近)から蓮生寺境内に
かけて、その昔、点々とサワシバの生育が見られた事実が記録として残っているからです。
長池周辺の過去を今に伝える貴重な資料「多摩ニュータウンB-4地区植物目録(1978)」に
写真とともにサワシバが掲載されているのに行き当たった時、何かが繋がったような気が
して感動したのをよく覚えています。それ以来、私にとって“気になる木”となりました。
団地の造成時に、どのように植栽樹種を選定・調達したのか、今となっては知る術が
ないのですが、もし周囲の雑木林から使えそうな樹木の苗を山採りしていたとしたら、
十分に有り得る話です。それを裏付けるように、団地に隣接する既存の樹林地内には、
おそらく本当にその当時からの生き残りと思われるサワシバも見つかっています。
いずれにしても、記録の重要性、そしてその記録がもしかしたら未来の誰かの
役に立つかもしれない、そんなことを考えさせられたサワシバにまつわるお話でした。