11月24日、今日は夕方まで調査のお仕事で、市内中心部の民有緑地へ出張してきました。
最初の調査地は、前回の初夏の調査で渡り途中のエゾムシクイやキビタキが観察され、
植物の記録そっちのけになりかけた斜面緑地です。今回も鳥影が多く、嫌な予感・・
先に手早くフロラ(植物相)や野生動物の痕跡などを記録してから、野鳥モードに切り替え。
藪の中から「ピロンピロン」、「ジュジュッ」と賑やかな声が聴こえてきました。
その正体は、特定外来生物に指定されている中国原産の外来種、ソウシチョウです。
輸入販売業者の経営破綻による大量放鳥や、一般家庭からの逸出がルーツとされています。
関東地方では1980年代からすでに確認されていたようなので、かなりの古参者ですね。
つぶらな瞳と日本離れした鮮やかな配色。外来種にもかかわらず多くのファンがいます。
数十羽の群れが林床の灌木や笹藪を飛び交っていましたが、その群れの中に思い切って
入り込んでみました。すると、警戒することなく目の前をチョンチョン通っていきます。
藪の中に潜んでいるからといって、警戒心が高いわけではないということがわかりました。
ところで、市内でソウシチョウの姿を見るのは秋から冬の間に限られています。
季節によって生息場所を移動する、つまり、国内で“渡り”を行っているからです。
関東では、富士山麓や丹沢などの西部山地で繁殖し、越冬のために丘陵地へ下りてきます。
外来種なのに渡り鳥というのは非常に珍しいケースだと思います。繁殖環境と越冬環境の
両方が、程良い距離感の場所に都合よく存在したことで、日本の自然の中に溶け込むことが
できたのでしょう。日本へ連れて来られる前の、彼らの故郷も一度見てみたいものです。
調査中、陽だまりでは昆虫も観察できました。ホソミイトトンボは、冬越しに備えて色が
褐色に変化していました。涙模様が特徴的なツチイナゴも、成虫越冬をする代表的な昆虫。
他方、ヤマグワの葉に止まっていたセスジツユムシは卵で越冬する直翅類です。
秋に見かける昆虫の体色の違いは、その生活史と密接に関係していたわけですね!
写真はありませんが、渡り途中のアサギマダラもひらひらと頭上を通り過ぎていきました。
調査日和の穏やかな一日、植物だけでなく生き物も色々と記録できて満足の成果です。
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