7月19日、朝起きると外からクマゼミの合唱が聴こえてきました。今シーズン初鳴きです。
“クマ”つながりでこちらのつる植物を紹介します。体験ゾーンの田んぼと築池の間で
見られる、クマヤナギという種類です。名前はヤナギですが、所属はクロウメモドキ科。
どこがどうクマなのか、説明を読んでも私にはピンときませんが、それはさておいて、
クマヤナギは面白い生態的特徴があります。1枚目の写真を見てわかるように、花と果実が
同じタイミングで観察できることです。今まさに花盛りなわけですが、赤い果実も同時期に
見られるとはなんとも不思議ですね。多くの植物は、花が咲いたその年のうちに実を結び
ます。一方のクマヤナギは花のあと、若い果実のまま過ごし、翌年の開花期になってから
やっと赤く熟すという性質があるのです。一度で二度美味しい、そんなお得な植物です。
ちなみに果実は小鳥が好んで食べるので、ここではもうだいぶなくなってしまいました。
クマヤナギは日本固有種です。里山ではよく見かける身近な存在なだけに、意外な感じが
するかもしれませんが、じつはそういう植物はたくさんあります。樹木だけを例に挙げて
みても、クマシデ、ホオノキ、クロモジ、メギ、ウツギ、クサボケ、ノダフジ、キブシ、
アセビ、ウグイスカグラなど、里山ではお馴染みの種類が世界で日本にしか分布しません。
そういった意味でも、世界的に希少な植物が手近に見られる里山の価値は大きいですね!
田んぼの周辺では、人気のジョウシュウカモメヅルも咲いています。コバノカモメヅルと
そっくりですが、花冠の直径が大きく、花の各裂片の先端がヒトデのように細長く伸びて
しばしばねじれること、大きいものでは葉が大人の手のひらくらいに長大となることなどが
違いとして挙げられます。また、コバノカモメヅルが平地の湿地や原野に広く見られるのに
対して、こちらは丘陵地の谷戸の林縁や畦畔などにやや限定して見られる傾向があります。
あまり注目されませんが、湿地ではセリの花も見頃です。春の姿は知っていても、真夏に
こんな可愛らしい花が咲くことはほとんど知られていません。最近、主に西日本でにわかに
区別されていた葉が細かく切れ込むタイプのセリ(サケバゼリ)が、分子系統解析によって
独立種として認められる可能性が高まっています。身近なセリがじつは2種類であった・・
となれば、セリを見る目も変わりそうです。そう、食べるだけが楽しみではないんですね!
ところで、この日は近隣のせいがの森こども園すいすい組の子どもたちがやってきました。
お泊まり保育の初日、長池公園で昆虫探しを楽しみました。自然館に戻ってきてからは、
昆虫のすみかや色・形についてのお話を聞きました。みんなとても意欲的で、私も楽しく
案内を進めることができました。足元の葉っぱにエゴヒゲナガゾウムシ、よく見つけたね!
じつは彼ら、昆虫アートの製作にも取り組んでいます。どんな作品ができるか楽しみです。